現代における生活の中では、「火起こし」というワードを普段使う事はありません。
家庭のコンロならスイッチを押すだけで火が着き、マッチやライターであれば持ち運びも着火も簡単です。
「火を起こそう」ということを、考える事すらありませんよね。
マッチやライターなどの便利な道具があるのに、わざわざ不自由で苦労を伴う「火起こし」をする事はありません。
しかし、それらの道具がなかった先人たちは、その知恵を絞り、苦労して火起こしをしていたのです。
では、キャンプに目を向けた場合であればどうでしょうか。
私はキャンプというものはある意味、
「普段感じることの無い、不自由を楽しみながらチャレンジするもの」
というように考えています。
そこで、チャレンジして欲しいのが、ファイヤースターター(火起こし棒)による着火です。
ブッシュクラフトでは定番になっているアイテムですが、一般的なキャンパーは使う人は少ないかも知れません。
これまで、ファイヤースターターを使ったことがない。
という初心者の方でも理解できるよう、順を追って解説をしていきます。
- ファイヤースターターの概要
- ファイヤースターターの魅力について
- ファイヤースターターの火起こし準備
- ファイヤースターターの火起こし手順
- 初心者でも火起こしできるのか
ファイヤースターターとは
ファイヤースターターは、サバイバル用品として使われる発火器具のことです。
昔で言うところの「火打ち石」に近い使い方で、火を起こすことができる道具です。
別名、「メタルマッチ」と呼称されることもあります。
マグネシウムが棒状の形(ロッド)になっており、ストライカーでロッドを削って粉末状にし、その粉末を火口(ほくち)にふりかけます。
ロッドをストライカーで強く擦り、火花を発生させて点火する仕組みになっています。
持ち運びしやすく、水に濡れても水気をふき取ることで問題なく使えます。
また、長期間に渡り活躍してくれるので、キャンプやブッシュクラフトだけではなく、防災道具としても重宝できます。
ファイヤースターターの構造
ファイヤースターターといっても厳密には、「2つの道具の総称」と言えます。
火打ち石で言えば、2つの石を打ち付けることによって火花を散らしますよね。
「石 + 石」
のワンセットで「火打ち石」というような感じです。
ファイヤースターターの場合は、
「ロッド+ストライカー」
のワンセットで、ファイアースターターと理解しておきましょう。
ロッド
ファイヤースターターを使う際に、削ることで粉末のもとになる主要部分です。
それに加えて、火花を発生させるための役割の半分を担っています。
ロッドの素材については、次の2種類があります。
素材 | 特徴 |
マグネシウム | 比較的安価で着火温度が高い |
フェロセリウム | 高価で着火温度が低い |
ファイヤースターターのロッドは、市販品の多くがマグネシウム素材です。
着火温度が高いため、慣れやコツが必要ですが比較的安価です。
フェロセリウムは、発火点が低いため、マグネシウムに比べて1/3程度の温度で発火してくれます。
簡単に火花が散ってくれるのですが、値段は少し高くなります。
しかし、初心者でも着火しやすいロッドと言えるでしょう。
ファイヤースターターは、マグネシウム素材で小さい物であれば、安いものは数百円から販売されています。
あまりに小さく使いにくいロッドだと、
“結果的に着火できない”
という結果になりやすいので、長めの大きいロッドを使用するほうが良いでしょう。
ストライカー
ストライカーは、ロッドと擦ることで摩擦を起こし、火花を散らせるために使う道具です。
ロッドによって、付属されている専用ストライカーもありますが、じつに様々な形状のものがあります。
ストライカーに関しては、ナイフの背面部分でこすることでも、その代役となります。
ロッドを削ったり、ロッドに対して適切に摩擦を与え、火花を散らせることが出来ればストライカーとなります。
ファイヤースターターの魅力
ファイヤースターターの魅力といえば、まず第一に、
“見栄えがよくてカッコいい!”
ということが、挙げられるでしょう。
ライターやマッチなどの便利アイテムがなくても、スマートに火起こしできたらとってもカッコいいですよね。
そして、利用頻度にもよりますがファイヤースターターは、相当な長期間に渡って使用することが出来ます。
「半永久的」というと言い過ぎかもしれませんが、万一に備えて1本持っておくだけで、防災道具としても活躍してくれます。
被災時であれば、マッチはわずかな本数しかなく、ライターもガスが尽きてしまえばそれまでです。
また、雨で濡れてしまった場合は、その力を発揮できませんよね。
そんな時でも、ファイヤースターターなら大丈夫。
金属なので多少の重さはありますが、細長い棒状となっているので、かさばることもありません。
何度も繰り返し使え、湿気や水にも強く、濡れていてもサッとひと拭きするだけで普通に使えるという優れもの。
さらには、周りの環境に左右されにくいという点も見逃せません。
ファイヤースターターは、周囲の温度や気圧の影響すらも受けにくく、冬の寒い季節や山岳などの高所での着火にも便利です。
ファイヤースターターでの火起こし準備
まず最初に火起こしをするにあたり、事前に必要なものを用意しておきましょう。
“火起こしは準備が8割”
と言われています。
スムースに火起こしできるよう、事前に準備しておく「火口(ほくち)」の材料について解説していきます。
火起こしに使う火口(ほくち)
火口とは、火花を散らしその火を移し取るものです。
分かりやすく言うと、一番初めに火を燃え上がらせるための物を指します。
そして、火口と言ってもその材料となるものは多岐にわたります。
ここでは、代表的な使いやすい材料をご紹介します。
- 麻紐
- コットン
- ティッシュペーパー
- チャークロス
大きく分けると、上記のものが挙げられます。
順番に見ていきましょう。
麻紐
麻紐は植物繊維の総称であり、通気性や吸収性に優れた安価な優れモノ。
土に帰すことも出来る、環境にもエコな素材です。
扱いやすく荷を縛ったり、キャンプには火口以外にも使い勝手が良いので、1束持っておくと便利です。
コットン
コットンは、日本語でいう「綿」のこと。
コットンも土壌などを汚染することなく、環境にも優しい天然素材です。
燃えやすいので、火口にピッタリです。
また、キャンプでちょっとした擦り傷などの怪我をしたとき用に、救急アイテムとしても活用できます。
ティッシュペーパー
どこの家庭にもあるティッシュペーパー。
一番お手軽で身近な火口ではないでしょうか。
- 安価
- 手軽
- 使いまわし
が出来るなど、とても便利なアイテムですね。
ティッシュペーパーは、キャンプでの用途が多岐に渡るので、持参する人は多いのではないでしょうか。
チャークロス
チャークロスは、綿100%の布を原料のとして「炭化」させたものです。
家にある綿で出来ている、不要になった衣服やタオルなどを使えば、材料費もかからず自作することもできます。
作り方も簡単で、綿布を空き缶にいれて火に掛けるだけで、炭化してチャークロスができます。
とても着火しやすく、ファイヤースターターとの相性もバッチリです。
チャークロスを火口として使い、ファイヤースターターで火起こしというのは、キャンパーとしては最高にカッコいい方法ですね。
火を育てる燃焼物
着火に成功して、小さな火が起きたら次の段階です。
着火した火が消えてしまわないように、起こした火を育てる必要があります。
その際に必要となるのが、火を育てるための「燃焼物」です。
火を育てる「燃焼物」には、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
いくつか、代表的な使いやすい材料をご紹介します。
- フェザースティック
- 松ぼっくり
- 乾燥した枯れ葉
- 乾燥した枯れた木の枝
それでは、順番に見ていきましょう。
フェザースティック
木の枝や、薪を細く割ったものを、ナイフで薄く削り出したものをフェザースティックといいます。
フェザースティックを作るのには、コツと慣れが必要です。
ゆったりとした時間が流れるキャンプの余暇の過ごしかたとして、フェザースティック作りにチャレンジしてみましょう。
フェザースティックを使った火起こしは、本格的なキャンプとしても最高に盛り上がります。
松ぼっくり
松ぼっくりは、松の木があるところなら周囲にたくさん落ちています。
自然にあるものなので現地調達でき、費用もかからない優れものです。
松ぼっくりは油脂分をたっぷり含んでいるため、とてもよく燃えてくれます。
ときおり、爆ぜる(はぜる)こともあるので注意しましょう。
乾燥した枯れ葉
枯れ葉は季節に左右されますが、現地で集めるだけなので費用が掛かりません。
代表的な燃えやすい枯れ葉は、スギでしょう。
注意点として、自然にあるものなので雨が降った後は、湿って火口として使えないことがあります。
枯れ葉を火口に使う場合は、十分に乾燥しているか確認してから使いましょう。
乾燥した枯れた木の枝
乾燥した枯れた木も、現地で調達できる費用の掛かりません。
あまり太すぎるものではなく、細めの枝木を探しましょう。
しっかりと乾燥していることが大事ですので、雨上がりの後で拾った枯れ木は使わないようにしましょう。
ファイヤースターターの火起こし手順
では、実際にファイヤースターターを使った火起こし手順を解説していきます。
まずは、次の3つを準備しておきます。
- ファイヤースターター(ロッド&ストライカー)
- 火口
- 火を育てる燃焼物
ファイヤースターターの実践
ここでは、例としてコットンを使用します。
まずは、火口となるコットンを解すようにして広げ、ふんわりとした状態で置きます。
次に、ロッドをストライカーでこすり、火口に削ったロッドの粉を振りかけておきます。
これをしておくことで、ふりかけたロッドの粉に引火しやすい状態になります。
ロッド先端を、火口に触れるようにしっかり固定します。
強く擦り下ろすことができなくなるので、先端が浮いた状態にならないようにします。
角度は、「40~45度」くらいを目安にしましょう。
ストライカーを使いロッド自体を素早く擦り打ち、火花を散らします。
この時、ストライカーでロッドの持ち手側から先端まで、大きく強く摩擦させるようにすることが重要です。
火口に火がつきました。
火はすぐに燃え尽きてしまうので、手早く次の手順にうつります。
準備した「燃焼物」で火が消えないように育てましょう。
ここでは、フェザースティックを用いています。
以上で、ファイヤースターターを使った火起こしは完了です。
ここからはさらに火を育て、大きくしていくことになります。
初心者でも火起こしできる?
ここまで、ファイヤースターターの使い方と火起こし方法を解説してきました。
初心者にとっては、頭では理解できたけど実際に自分がやっても出来るのだろうか…。
と不安になるかもしれません。
どんなことでも同じですが、やらなければいつまで経っても初心者のままです。
まずは一度、自分の手で実践してみましょう!
なにも最初から、上手くいかなくてもいいのです。
何度も失敗するからこそ、成功した時のモチベーションは最高潮になるのです。
とは言え、ずっと失敗ばかりして嫌になって辞めてしまっては勿体ないですよね。
ここでは、初心者が気を付けるべきポイントを解説しておきましょう。
- 事前準備をしっかりしておく
- 扱いやすいファイヤースターターを選ぶ
事前準備をしっかりしておく
前述の通り、「火起こしは準備が8割」です。
スムーズに火起こしするためには、正しい手順で素早く行動できるように準備しておきましょう。
- 火口の材料を何にするのか
- 火を育てる燃焼物は何を使うのか
具体的に決定したら、現地に持ち込み、火起こしの準備を整えます。
例えば、コットンや麻紐を使うのであれば、しっかりとほぐして、ふんわりと盛り付け配置する。
火口が発火したらすぐに、火を育てる燃焼物を投入できるようにしておくなど、配置を含む準備です。
ここでモタモタしてしまうと、せっかく火口が発火してもそのまま鎮火してしまう…。
などといったことに繋がります。
扱いやすいファイヤースターターを選ぶ
初心者が使いやすく、発火を成功させやすいファイヤースターターを選ぶのも大きなポイントです。
そこでおすすめなのは、素材が「フェロセリウム製」のロッドを選択する事です。
前述しましたが、フェロセリウム素材はマグネシウムに比べ、発火点が低く火花がを散らせやすいためです。
フェロセリウムの火花の燃焼温度は「約3000℃」と高温で、初心者でもスムーズな着火に繋がります。
少し値段は高くなりますが、長く使えるものなので「フェロセリウム製」のロッドを使ってみましょう。
他にも、ロッド自体の素材以外に長さや直径、ストライカーの形状など、扱いやすさも様々です。
初心者が選ぶポイントは、長くて直径が大きく、握りやすいストライカーであることです。
私は4本のロッドを持っていますが、一番愛用している
「フェロセリウム製ロッド&ストライカー」を、ご紹介しておきます。
ぜひ参考にして使ってみてくださいね。
純高炭素鋼で作られた、オシャレでカッコいいストライカー。
チェーン付きなので、そのままネックレスとしても使える優れモノ。
鏡面磨き仕上げされており、見た目にも美しく荒々しさも感じさせてくれるストライカーです。
まとめ
マッチやライターなどに頼らず、ガスなどの燃料を必要としないファイヤースターター。
コツさえ掴んでしまえば、カッコよく即座に着火できるようになります。
被災時などにとても安心を与えてくれ、魅力的な相棒になってくれるのではないでしょうか。
キャンプは、ある意味で「不自由さを楽しむもの」です。
これまで、キャンプでの調理や焚き火などの火起こしに、ライターやマッチを使ってたと思います。
次回のキャンプでは、ファイヤースターターを使って、火起こしにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
きっと、これまでより実りのある楽しいキャンプライフを過ごせることでしょう。
また、キャンプでは定番といえる火起こしからのバーベキュー。
始めるときに必要になる、必要なキャンプ道具やコツなども紹介しています。
ぜひ、こちらも見て頂き、あなたのキャンプライフのお手伝いとなれば幸いです。
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